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無題
「俺のことはいいから」そう言って、上川は電車に残り、A君とB子は、ホームに降りた。ここから上川の長旅が始まる。寮の門限は、とっくに過ぎていた。それなのになぜこんな状態になったかというと、A君かB子の家に泊まろうと企んでいたからである。私の定期では都営新宿線なんだけど、A君とB子は中央線に乗ったので、上川も付随した。A君の家は吉祥寺で降りてから、井の頭線に乗り換えなければならない。B子の家は、三鷹で降りて、歩く感じだ。さあ、中央線が新宿を越えて、西へと走っていく。何?A君は今宵、兄の家に泊まるそうだ。でもね、薄々気付いていたんだよ。電車は吉祥寺を過ぎて、三鷹へと走った。車中、色々なことを考えたものだが、二人の邪魔はできない。三鷹で、二人はドアの外へ。
渡る世間は鬼ばかり。所持金は432円しかなく、武蔵小金井で引き返して、新宿に戻った。京王線の最終便は、桜上水止まりだ。有無を言わずに、乗るしかない。桜上水に着いた頃には、深夜1時を過ぎていた。歩いて帰ろう・・・。早歩きでは、体力の消耗が大きいから、小股でゆっくりと歩いて行った。つつじヶ丘を過ぎた頃だろうか、足が非常に痛くなってきた。この痛みに耐えたら、俺を救ってくれ。そう思いながら、気力だけで歩いた。国領の西友を通過し、もう少し・・・、もう少し・・・、調布だ。時刻は3時半になっていた。寮の開門時間は、6時半なので、それまで今度は時間を潰さなければならない。24時間営業のマックがある。入ってみたが、只今の時間はお持ち帰りだけの営業だと言われた。お金がないものは、座ることすらできないんだよ。仕方なくなく外に出て、南口のバス停にベンチがあったことを思い出し、そこへと向かった。助かった。無料のベンチが、俺を迎えてくれた。だが、外なので寒い。それでも身を縮めて、じっとしているしかなかった。前を見ると、タクシーの運ちゃんらが暇そうにしていた。こんな時間でも、働いている人がいるもんだな。妙だが、親近感が湧いた。4時半になると、調布駅が開放されて、中に入った。温かい。ベンチには背もたれがある。そこで2時間ぐらい寝て、西調布行きの電車に乗って寮へと帰ったのさ。
苦い経験ではあった。夜は辛いぜ。もうやめよう。上川には叶わぬことだ。しばらくゼミもサボろう。・・・でも、乗り越えた感が今はある。
今日の昼は、天気がよく、近所の武蔵野公園でおにぎりでも食べた。自然って美しいんだな。優しいんだな。今の上川の心には、深く響いた。足の痛みはひいていた。あの時耐えた痛みの先には、こんな美しさをわが胸に与えてくださったのかな。のんびりと風に吹かれよう。今まで生き急いでいたんだよ。この時、私は本当の自由を感じた。そう、これこそ幸せなことじゃねえか。どうして分からねえんだよ。もっと、のんびりしたっていいんだよ。ストライキしたって、ヒッピーになったって。これは、生涯忘れないようにしておきたい。
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